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自然史系の本の感想、昆虫観察、博物館めぐりのブログ

【本の感想 #10】ネイティブが教える日本人研究者のための論文の書き方・アクセプト術

今回紹介する本は

『ネイティブが教える日本人研究者のための論文の書き方・アクセプト術』

  

 

書誌情報

出版社:講談社

ページ数: 493 p.

2019年12月19日発行

単行本(ソフトカバー)

著者:エイドリアン・ウォールウォーク

1984年から科学論文の編集・校正および外国語としての英語教育に携わる。2000年からは博士課程の留学生に英語で科学論文を書いて投稿するテクニックを教えている。30冊を超える著者がある。(本書著者紹介より抜粋)

 

訳者:前平謙二

医学論文翻訳家。実用英語技能検定1級、JTF(日本翻訳同盟)ほんやく検定1級(医学・薬学、日→英)。(本書著者紹介より抜粋)

 

訳者:笠川 梢

医薬翻訳家。実用英語技能検定1級、JTF(日本翻訳同盟)ほんやく検定1級(医学・薬学、英→日・日→英)。留学、社内翻訳を経て、2005年独立。治験関連文書や論文などさまざまな医薬文書の英訳・和訳を手掛がける。(本書著者紹介より抜粋)

本書の目次 

第1部 英文ライティングのテクニック

 第1部 論文執筆の計画と準備

 第2章 センテンスの構造:語順

 第3章 パラグラフの構成

 第4章 長いセンテンスを分割するテクニック

 第5章 簡潔で無駄のないセンテンスの作り方

 第6章 あいまいな言葉、表現、繰り返しを避ける

 第7章 [Who+Did+What]の構造を明確にする

 第8章 研究成果を強調するテクニック

 第9章 研究の限界の限界の書き方のテクニック

 第10章 他人の研究を建設的に批評する方法

 第11章 プレイジャリズム剽窃)とパラフレージング(置き換え)

第2部 論文構成のテクニック

 第12章 論文タイトルのつけ方

 第13章 要旨(Abstract)の書き方

 第14章 序論(Introdaction)の書き方

 第15章 文献レビューの書き方

 第16章 方法(Method)の書き方

 第17章 結果(Result)の書き方

 第18章 考察(Discussion)の書き方

 第19章 結論(Conclusions)の書き方

 第20章 投稿前の最終チェック

 第21章 ネイティブが教える論文英語表現

(本書目次より)

 

感想

「論文執筆」の本というと、さまざまな解説書が出版されていますが、本屋で分厚い本書が目に留まり、手に取ってみました。

 

本書は非ネイティブに向けた論文執筆の計画から執筆手順、文章の作成術、そして投稿まで、執筆活動のテクニックを解説しています。

 

本書の構成は大きく2部に分かれています。

 

第1部は「英文ライティングのテクニック」。

 

論文の計画と準備にはじまり、論文にふさわしい具体的な文章表現について解説しています。

 

論文執筆の解説書では、センテンスの並びやパラグラフ(段落)の書き方を述べる場合が多いかと思いますが、本書ではより簡潔な表現をめざすべく、単語単位の解説(単語同士の順番、冠詞の有無や使いどころ、控えたほうが良い単語)が多く、かなり細かい部分まで触れている印象です。

 

第2部は「論文構成のテクニック」。

 

ここでは第1部よりも大きな枠組み(序論、結果、考察など)に対する執筆方法を解説しています。

 

論文の基本構成は、おおむねタイトル、序論、方法、結果、考察、まとめの順であるかと思います。

 

本書ではこれら各セクションごとに解説しており、より良い内容に向けて説明されています。

 

個人的に気になったのは「序論と要旨の違い」、「考察の締めくくり方」、「先行・類似研究の落とし穴をどのように指摘するのか」、「要旨と結論の違い」など。

 

第2部は各章で共通して「構成」、「書き出し方」、「用いる時制」、「センテンスの長さ」が解説されており、実際に論文を書く上で気になったり迷ったりしそうなポイントに触れてます。

 

第1部、第2部ともにその構成は「論文ファクトイド」「ウォームアップ」、「問題の解決策」からなっています。

 

まず、「論文ファクトイド」は各章(各節)に関連する科学エピソードや名言などが紹介されており、解説の導入または息抜きのパートかと思います。

 

次の「ウォームアップ」では読者に対して問いかけがあり、その章(節)に関わる問題が出されています。

 

本書でも述べていましたが、こうした問題を使うことで、科学英語や論文執筆などを教える先生がテキストとして扱うのにも向いていそうかなと思いました。

 

そして「問題の解決策」では具体的な執筆術を解説しています。

 

解説で特徴的なのは、どの節でも文章や段落の「良い例」「悪い例」を併記しており、修正箇所とその案を示していて、こうした比較を考えることでより良い文章が身につきそうです。

 

また論文に使える英語表現だけで一章まるまる使われているのがすごいなと思いました。

 

全体的にかなりのボリュームがあるため、すでに論文執筆を始めている人が気になる個所を読んで活用することをオススメします。

 

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