【本の感想 #16】キリンのひづめ、ヒトの指 比べてわかる生き物の進化(NHK出版)
今回読んだ本は
『キリンのひづめ、ヒトの指 比べてわかる生き物の進化』
健康に暮らす人なら、ふだんどれだけ自分の体のことを気に掛けるだろうか?
運動のし過ぎで筋肉痛になった。
油物を食べて胃が持たれた。
デスクワークで肩が凝っている。。。
何か不調が起きたとき、自分の体の訴えを顧みるのが普通ではなかろうか。
ヒトの体はじつによくできている。それは他の動物も例外ではない。
本書は生物の解剖と比較によって生物のからだの構造を明らかにする「比較解剖学」でもってその進化を紹介する一冊だ。
肺、手足、首、皮膚、消化器官など日々の生活でも意識しそうなからだの器官から、草食動物にみられる角に関する解説もある。
同じ器官であっても動物によってそのかたちも仕組みもさまざまであることが解る。
本書を通して動物どうしのおなじ器官を比較することで、生物の長い進化の歴史の中でいかにしてこれらが変化し、各々の生活に合わせて働いているかが学べる。
著者はキリンの専門家。もちろん上記の器官に関するキリンの例も述べられているので、キリンの魅力も余すことなく語られている。
毎年わざわざ角を生え変えてしまうシカや、消化器官の働きのちがいからウシに比べて消化効率の悪いゾウなど、一見するとムダの多い感じもする生態にも著者は「効率的でなくても、その動物自身が生きてける世界でなんとかやっていけるのならば(中略)それでいいのだ(本書より引用)」と語る。
本書を読めば、複雑な働きと構造も、無駄に見える特徴も「進化ってすごい!(本書より引用)」と思えるのではないだろうか。
関連書籍
『キリン解剖記』著者が取り組んだキリンの首のしくみの謎を明らかにするまでの研究生活エッセイ