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自然史系の本の感想、昆虫観察、博物館めぐりのブログ

【本の感想 #7】化石の探偵術 読んで体験する古生物研究室の世界

 

今回紹介する本は

『化石の探偵術 読んで体験する古生物研究室の世界』

   

 

本書の内容

 本書では太古の生物を研究する学問「古生物学」について、どんな方法で研究が行われているのか、その様子を紹介しています。

研究対象は化石。そこからどうやって古生物の生きた時代を推定し、生きていた様子の復元をするのか etc... 探偵の「シャーロックホームズ」の一説とあわせて解説されています。

書誌情報

出版社:ワニブックス

ページ数:252

2020年10月8日発行

新書

著者:土屋 健

サイエンスライター、オフィス ジオパレオント代表。金沢大学大学院自然科学研究科で博士(理学)を取得。サイエンスライターとして初めて日本古生物学会貢献賞を受賞。(本書紹介より抜粋)

 

監修:ロバート・ジェンキンス

金沢大学理工学研究域地球社会基盤学系准教授。東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程を修了、博士(理学)。深海極限環境に生息する生物の進化や生態を、化石と現生の両視点から研究。地球生物学者/古生物学者。(本書紹介より抜粋)

 

イラスト:ツク之助

いきものイラストレーター。爬虫類や古生物を中心に、生物全般のイラストを描く。ツクツクれぷたいずグッズシリーズを展開。(本書紹介より抜粋)

 

目次 

第零部 探偵術を知る前に 【基礎知識編】

壱部 徒手空拳は似合わない【アイテム編】

第弐部 化石を探せ

第参部 手がかりは現場にある

第肆部 化石の声を聞く

(本書目次より)

 

感想

夏になると毎年のように博物館などで恐竜の展示が特集され、毎年どこかで新種の化石が見つかったことが報道されています。

 

こうした化石はどうやって見つかるのか?

自分の近所でも探せるのか?

化石の研究ってどうやってるの?

 本書ではそんな疑問を解説してくれています。

 

個人的注目ポイント

 本書は化石の話がメインですが、その発見の前段階である、調査の話が詳しく載っています。

化石を探すときは、ただやみくもに地層を探すのではなく、調査対象の地質を知ることから始まるとのこと。

そのさいに必要なのが地質図。

土壌の下に広がるさまざまな地層や岩体が色分けされた地図であり、化石を探すものにとってある意味”宝の地図”です。(参考:地質図Naviーリンク

 狙っている時化石のありそうな時代の地層をさだめ、現地に行って露出している地層を調査していきます。

 

より細かい地図が必要になれば現地で自作し、化石のありそうな岩石やノジュール(化石を含むことのある石灰質の岩塊)を探していきます。

 

化石を発見してからも、その詳細な位置、産状などを記録するところからはじまり、実際の化石調査がさまざまな手順を踏んでいることが分かります。

 

実際、地質図という宝の地図を読み、過去の研究例を調べ、研究仲間と情報を交換し、現場を訪ねて、ノジュールを見つけたときの興奮、それを割るときの高揚感はたまらないものがある。

(本書より)

 

化石の研究というと、標本をじっくり観察しながら文献とにらめっこして調べていく、そんな作業を想像してしまいます。

しかし現在の研究方法はほんとうに多様であることがわかります。

とくに印象的なのがCTスキャンや3D画像といった最新技術によるアプローチです。

化石を破壊せずに内部構造を読み取ったり、それをもとに3D復元をおこなったりと、これまで直接目にすることのできない特徴を得ることができるとのこと。

また3Dデータは化石の形を保存する意味でも重要で、そのようなデータが公開されたりもしています。(参考:異常巻きアンモナイト3D図鑑-リンク

 

化石という直接証拠によらず、コンピューターによって欠損部位を調整して補完するというやり方は、もちろん直接証拠が発見されれば、くつがえる可能性もある。しかし、この新たな手法は古生物学における、とくに大型種の復元について、新たな可能性を示すこととなったといえるかもしれない。(本書より)

 

化石と地質学とのかかわり、そしてさまざまなアプローチで化石を研究してその生態を”推理”していく様子が書かれており、「化石の研究法」を感じ取るには良い入門書かと思います。

またツク之助さんによるかわいいイラストが本書の内容にあわせていくつも掲載されており、眺めているだけでも楽しい一冊です。

 

合わせて読みたい

『恐竜・古生物ビフォーアフター

 土屋さん著、ツク之助さんイラストによる、古生物の復元に関する昔と今の移り変わりが分かる一冊です。