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【本の感想 #3】地磁気逆転と「チバニアン」

今回紹介する本は

地磁気逆転と「チバニアン」(ブルーバックス)』

 

 

 

本書の内容

 本書は、地球の過去の時代名に日本の地名がついたことで話題になった「チバニアン」について、その採用決定までの経緯とそのために重要な役割をなす「地磁気」に関するお話がつづられています。

 

書誌情報

出版社:講談社

ページ数:258

2020年3月20日発行

新書

著者:菅沼 悠介

国立極地研究所 地圏研究グループ 准教授。博士(理学)。産業技術総合研究所ポスドク研究員、東京大学大学院理学系研究科特任助教国立極地研究所助教などを経て、2016年より現職。専門分野は、地質学、古地磁気学。海や湖の地層や氷河地形などから過去の地球環境の変動メカニズムを解明することを目指している。(Amazon.co.jp 本書紹介ページより抜粋)

目次 

第1章 磁石が指す先には

第2章 地磁気の起源

第3章 地磁気逆転の発見

第4章 変動する地磁気

第5章 宇宙からの手紙

第6章 地磁気逆転の謎は解けるのか

第7章 地磁気逆転とチバニアン

                         (本書目次より)

 

感想

日本の歴史で時代の名前を学ぶ機会があるかと思います。

「江戸時代」とか「平安時代」とかいうおなじみのやつです。

 

人類の出現よりも前、さらに昔の時代にも「名前」がついています。

たとえば恐竜の生きていた時代である「ジュラ紀」とか「白亜紀」というのが一番なじみがあるかもしれませんね。

これを地質時代と言います。→地質時代の詳しい説明は右のリンク先参照(wikipedia

 

この地質時代の一つに、日本の千葉県の名を冠した「チバニアン」が

2020年1月17日に決定しました。

 

キーワードは「地磁気」、そして「地磁気逆転」。

地磁気」とは地球の磁場であり、方位磁石が北と南を指すことで理科の授業でも

聞く話ですね。

 

驚くべきことに、地球の磁場(地磁気)が180度ひっくり返るという現象が過去に何度も起きていたのです。そして、一番最近に起きた地磁気逆転の証拠が、まさにチバニアン誕生の舞台となった地層、千葉セクションから見つかったのです。(本書「はじめに」p. 5より)

 

なんと地球の磁場は過去に何度も逆転しており、千葉県に露出する地層に残された

その記録がチバニアン誕生に役立ったとのこと。

 

古代ギリシャの時代に磁石が発見され、それが歴史時代を通して人間活動の

さまざまな場面で活かされます。

そのなかで地球の磁気の存在と、その解明に向けた研究が発展していきます。

 

そんな地磁気を生み出すのが地球内部の外核マントルといった構造とその対流。

→地球内部の詳しい説明は右のリンク先参照(wikipedia

 

「地球ダイナモ」と呼ばれる磁場の生成により地球の磁極ができるとのこと。

地磁気の発生の仕組みや、それが岩石にどのように記録され、

どうやって研究されてきたのか、その歴史が語られています。

 

この地磁気がなぜ逆転するのか、その原因はまだ未知な部分が多いようです。

 そんな地磁気逆転が一番最近おきた時期(逆だった地磁気が現在の地磁気になった

時期)がのちに「チバニアン」となる時代の開始時期(研究者の名前をとって

松山-ブルン境界と呼ばれます)にあたります。

 

この地磁気逆転時期は従来、約78万年前とされてきましたが、著者らの研究で

その年代が約77万前に修正される可能性が出てきます。

 

ひとつの海底堆積物で、地磁気逆転が記録されていて、ミランコビッチ理論にもとづく年代決定が可能であり、さらに火山灰を含む地層があれば、松山-ブルン境界の年代が決まる(本書p. 188)

 

そんななか、千葉県に露出する地層「千葉セクション」がその候補として注目されていきます。

 

くわしくは本書をご覧いただきたいのですが、好条件のそろう露頭が日本に

存在し、そこでさまざまな手法をもって松山-ブルン境界の年代が推定されていく

ようすが語られています。

 

おなじくこの時期の年代境界設定に取り組むイタリアチームとの競争や、

数年にわたる審査の様子などを追うことができます。

 

本書は「地磁気」と「地磁気逆転」についてかなり詳しく解説されている

印象です。

 「チバニアン命名までのストーリーはもちろん、こうした地磁気に関する

勉強をするうえでも良い入門書になるかと思います。

 

合わせて読みたい

地球表層のしくみや内部との関係性を解説

 

地質年代のさらなる理解になる1冊